癒しと活力の旅。瀬戸内国際芸術祭へ<後編>
塩田千春<遠い記憶>
島ごはん。
瀬戸内国際芸術祭への旅<後編>です。
(よかったら<前編>からお楽しみください!)
2日目は直島(なおしま)から移動して、豊島(てしま)へ。
豊島で楽しんだことのひとつに食事があります。
瀬戸内国際芸術祭ではアートだけではなく、島の生活文化を最も表す「食」をフィーチャーして、瀬戸内の食材や食文化を世界に向けて発信する「食プロジェクト」が全島で行われていました。
そんな中、私が「海の見えるレストラン」でいただいたのがこのランチ。
讃岐オリーブのローストポークボウル
すべて豊島で採れた食材で作られたメニューです。
今年収穫したばかりというオリーブの新漬けは、濃厚ながらフレッシュな味わい。讃岐オリーブを食べて育ったというローストポーク、ガーデンで育てられたハーブと野菜のサラダなど、どれも美味しく、海をのんびり眺めながらの食事は心も癒されます。
他にも、古民家をアートにした「イル ヴェント」というカフェでいただいたのも、素朴な島食。
島定食
トビアス・レーベルガー<イル ヴェント>
どこか異空間に入り込んでしまったようなカフェの空間と、メニューが少しミスマッチな感じもしますが笑、とてもユニークですよね。
豊島美術館。
そして豊島のアートといえば、やはり豊島美術館は外せません。
建築家・西沢立衛さんとアーティスト・内田礼さんによる美術館は、豊島の棚田が広がる小高い丘の中腹に建てられています。
西沢立衛/内田礼<豊島美術館>
巨大な繭が埋まっているようにも見えますよね。
中では一日を通して「泉」が誕生する作品<母型>が展開されており、内田礼さんの神秘性さえも感じられる世界観に、心がほどかれていくような時間が過ごせます。
さらに豊島のアートで心を惹かれたのは、クリスチャン・ボルタンスキーの
<ささやきの森>です。集落から歩いて30分ほど、静かな森の中に吊るされた風鈴のインスタレーションです。
クリスチャン・ボルタンスキー<ささやきの森>
風鈴の短冊には、これまでに訪れた人の大切な人の名前が記されています。
風が吹くたびに揺れる風鈴、まさに「ささやき」のような優しい音色は、人の想いが浮遊する魂のようにさえ思えて、時間を忘れて佇んでしまいます。
ボルタンスキー氏のコメントに、その意図が語られています。
「この作品は終わりのない作品であり、いつかこの森が風鈴の音で満たされることを願っている。そして、やがてこの場所は、私の名前が忘れ去られたあとも、人々が大切な人を敬うために訪れる巡礼の地になるかもしれない。」
―クリスチャン・ボルタンスキー(ベネッセアートサイト直島より引用)
ボルタンスキー氏の作品は、他にも世界中の人の「心臓音」を集めた<心臓音のアーカイブ>があります。
生の象徴である心臓音(鼓動)と、魂の音色のような<ささやきの森>は連動したインスタレーションなのかなと感じました。
自然とアート。
自然はそのまま、あるだけで“生きている”ものですが、
アートは人為的な世界(価値)の創造や発見、解釈の提示であり、人が命を吹き込むものです。
そう考えるともともと対局にあるものだと言えますよね。
それが同時に溶け込んだ島の風景は、
まさに「アートの聖地」と呼ぶにふさわしい場所なのだと思いました。
ちょっと大げさかもしれないですが、言葉にしがたい“生の喜び“みたいなものを感じさせてくれるんです。
2016年の瀬戸内国際芸術祭は終了してしまいましたが、
豊島美術館や前編でご紹介した地中美術館など、常設展として観ることができますので、よかったら行ってみてください。開館日などはベネッセアートサイト直島で更新されているようなので、事前にチェックしてくださいね。
Sachiko(さちこ)
フリーランスのWEBディレクター/ライター
美容、コスメ、ファッション、健康食品など女性向けサイトの制作や運営に多数たずさわる。興味を持ったことは何でもトライして、浅く広く楽しむタイプ。好きなものはお酒、食べること全般、旅、音楽、アート、読書、映画、ゲーム、ジム通い。